8.27.2009

思ひ出

高校生の時、寮にいたことがあったんだけど、そんときのちょっと不思議な話。

最初2人部屋にアイウエオ順に振り分けられてルームメイトが決まるんだけど、けっこう自由な寮だったので、しばらくしたら移動も出来た。

いくつかの移動があって、2人部屋に1人の時もあったりしたんだけど、ある日「大くん」が俺のところに移ってきてもいいかと訪ねてきた。
よく知らない奴で、まぁ後に最悪な奴だってことがわかるんだけど、それは今回の話とは全然関係ないのでひとまず置いておいて… 一人ってのもつまんないかなと思って承諾した。

当初、大くんは元々ルームメイトだった「マツくん」の体臭が原因で俺のところに移ってきた、なんて言ってたんだけど、後にもう一つ理由があることが分かった。

それはマツくんの超能力だという。

マツくんは背がデカくて、デブではないけどゆるい体をしていて、話し方も動き方ものんびりした奴だった。
運動も勉強もイマイチだったけど、なんとなくみんなから愛される雰囲気を持っていた。

大くんが言うには、マツくんはコインを投げて表裏を当てるゲームを100%言い当てるんだそうだ。
そして、寮に一つある電話のベルが鳴った瞬間に、それが誰への電話か分かるらしい。

ある夜、大くんがゴルフをしている夢を見ていて、目を覚ますとマツくんがシクシク泣いていた。
大くんが話しかけるとマツくんは「ゴルフコースのグリーンが…」と言い出した。
大くんが驚くとマツくんは「こんな自分が嫌だ」と言って泣き続けた。

そんなことが怖くて、大くんは部屋を出ようと思ったらしい。

びっくりする話だったけど、話の雰囲気からしてマツくんに興味本位で真偽を確かめられるような感じでもなかったので、時が経つにつれてなんとなくそんなことも忘れていった。

そして、年度末。

うちの寮はテレビ部屋があって、そこにあるビデオデッキは毎年買い替えるのが伝統だった。
年の最初に希望者がお金を出しあってビデオデッキを買って、年の最後にお金を出した人たちがくじを引いて、当たった人がもらえるということを毎年やっていた。
すっかり忘れていたけど、どうやら俺も金を出していたようで、くじを引くことになった。

みんなが廊下に集まって賑わっていて、俺の隣に大くん、向かいにはマツくんが座っていた。
大くんがマツくんに「誰に当たると思う?」と聞いた。
マツくんは「コウキ」と俺を指さした。

番号が発表されて、みんなが「誰?誰?」とワイワイ盛り上がっていたけど、もちろん当たったのは俺だった。

驚くことが二つあったのでポカーンとしてしまって、そういやそんな能力あったって言ってたな、とそこで思い出していた。

ビデオデッキは500円で人に売りました。